Naoko Ishida's Profile

なおコーチの「取扱い説明書」

石田 奈央子 (いしだ なおこ)


1973年、神奈川県生まれ。

共立女子大学国際文化学部卒業。

生まれつきの弱視であったが、大学在学中の急激な視力低下により自力での文字の読み書きが困難になり、2005年秋より盲導犬と共に生活している。

2007年、視覚障碍者のためのコーチ養成機関・日本視覚障碍者コーチ協会との出会いを期にコーチングの学びをスタート。

2011年より、世界中で約35000人にコーチングの学びを提供しているCTIの日本法人・CTIジャパンにてコーチングプログラムを受講し、2013年5月、プロコーチの資格であるCPCC(Certified Professional Co-Active Coach)を取得。

同年10月、14年半勤務した会社を退職しプロコーチとして独立。

2014年9月、コーアクティブ・リーダーシッププログラム修了。

趣味は落語鑑賞。自らも大和家くろ猫の芸名で創作落語を演じている。


**********************************************


20歳を過ぎた頃から少しずつ視力が低下してきました。

体の老化と共に、という話ではありません。

まだ、右も左も分からない花の女子大生の時代の事です。

子供のころからの弱視でしたので、すぐに日常生活が送れないほどの困難はありませんでしたが、それでも気持ちはかなり落ち込んでいました。


自分の視力が少しずつ低下し、白いテーブルの上に置かれた白いカップをつかみ損ねて、さて、周囲にどうやってこれをごまかすか? そんなところにピリピリと神経を逆立てて過ごしていました。いい男の顔が分からない。そんなことは二の次です。


そんな折、病院に勤務する医療ソーシャルワーカーという人の存在を知りました。

治療を行う医療スタッフとは少し違う立場から、患者の生活全般、気持ちに寄り添い、相談業務を行っている人なのだと本で読み、衝撃を受けました。


自分もこんな職業に就いてみたい、いや、そんなことより、そんな人に出遭い、とにかく話を沢山聴いてほしい。


不安に打ちひしがれた21歳の私は、そんなことを密かに願っていました。

そんなある日、テレビでコーチングというものの特集を放映しているのをたまたま見かけたのです。


目の状態が悪く、処方されていた薬が強かったため副作用で体調もすぐれなかったので、確か自宅のリビングルームで、毛布にくるまってごろごろしていた、冬の日の夕方のニュース番組だったと記憶しています。1996年頃、それはちょうどアメリカから日本にコーチングというものが入ってきたばかりのことだったと、だいぶ後になってから先輩コーチに教えていただきました。


悩んでいる人の話を電話で聴き、心に寄り添う。素人の理解はそんな程度でした。

でも、視覚障害があり外出があまり得意ではない(と思っている)私にとっては、電話で出来るこの仕事は素晴らしい職業だなぁ、いつかこんな仕事に就けたらいいなぁ。

そんなことを思いながら、私はそのまま毛布にくるまって眠ってしまったのです。

私が再びコーチングに出遭ったのは、それからおよそ10年後の2007年秋のことです。


盲導犬関係のメーリングリストで視覚障碍者を対象にコーチングを教えていた勉強会の記事を見つけ、参加したのがきっかけでした。


それから今日まで、更なる高みを目指して研鑽を積み続けています。

ところで、更なる高みというのはいったい何なんだろうと改めて考えてみると、

多分、人があんまりやっていない生き方というのを一番先頭に立っておもしろがってやって、更にそれを多くの皆様に積極的に見せて行くこと、なのではないかと感じています。


私は落語が大好きです。大酒飲み、お金儲けしたい人、異性にもてたい人、、、とにかく落語の登場人物は人の様々なリアルな欲を先頭切って表現した「困ったアンポンタンたち」です。


でもその「困ったアンポンタン」は誰の心にも多かれ少なかれ存在していて、だからこそ、落語家たちが先頭切って高座でそれを演じると、まるで鏡を見せられているような気がして、何となくこそばゆくて笑ってしまうんですね。

私もコーチとして、そんなあり方で生きていけたらいいと思っています。


たまたま「障碍者」というのもやらせていただいていて、世の中的には「いろいろ出来ないことや制限がある」と思われているでしょうし、自らも、この思い込みの片棒は担いでいると認識しております。


そんな、いわゆる「制限だらけの人」が、いろんなことにおもしろがってチャレンジしながら、失敗したりダメダメだったりするところを、むしろ積極的に先頭に立って社会に見せて行きたい。


あらかじめお断りしておきますが、これは相当なアホです(笑)。

私がそうすることで、「なんだか実は私もそれやってみたかったんだよね~」という人の心がの「寝た子を起こしてしまう」可能性があります。

そんなときこそ、自分の人生を自分で裏切り倒す、、まさにそのときです。


クライアントさんの心に潜む「寝た子」を揺り起すために、常にコーチなおが先頭を切って、リアルなアンポンタンとして自分の中の「寝た子」の声を聴きながら生きていきたいと思っています。


どうぞよろしくお願いいたします。